1.大和市における「市民参加」の系譜
平成10年 みんなの街づくり条例
平成14年 新しい公共を創造する市民活動推進条例
平成17年 自治基本条例
平成18年 住民投票条例
平成XX年 市民参加条例
平成XX年 市民自治区設置条例
大和市では市民が積極的に自治に参画するしくみ、発想が早くから整えられてきたことが伺われます。
前述の茅ヶ崎市同様、大和市のHPにも「市民」という言葉がトップページに踊り、そうした行政の「構え方」が、すでに自然体になっているように見受けます。
現在、同市では「市民参加条例」の制定に向け、活発に準備が進められています。HPにも「市民参加条例デザイン中!」との表題が目を引くニュースレターの発信を始めています。その文中には、こんな一節があります。
…市の施策は大変幅広く、私たちの生活全般に関わっています。それを市民も自ら考え提案し、結果を評価し、さらには改善策を考えることにより、市民にとってより良い生活が実現できるのではないでしょうか…
さらにまた同HPには全国自治体を対象とした市民参加条例関連リンク集が準備されており、大阪府蓑面市、兵庫県宝塚市ほか制定済みの自治体、北海道伊達市、埼玉県久喜市など策定中の自治体、その他参考になる自治体の名が並んでいます。その一覧を眺めつつ、いやがうえにも、市のHPそれ自体が、すでに「市民に向けられている」ということをひしひしと痛感させられるのです。
今回の視察を前に、予め同市企画部の発刊になる「市民がつくったまちの憲法」という本を読みました。私どもが大和市の施策に感銘を受けた部分を、この本の中からピックアップし、この視察報告の末尾に参考までに添付させていただきますが、その中にも、役所対市民、ではなく、すでに市民が原案をつくり、それを市民に提案して、市民の間で検討してもらうという、市民対市民、の構図が、大和市ではできあがっているのです。
さらに、今春できたばかりの市総合計画についても、市民参画ということでは、これぞまさしく「市民のための」「市民による」総合計画であると言える、さまざまな工夫と努力がなされています。
今回の視察は、これら大和市が取り組む市民活動推進の枠組みについて、その最先端情報というよりも、「まず丸亀市は何をすればいいのか」ということに着眼し、視察を行ってまいりました。
2.大和市の特記事項
説明冒頭の概略説明をいただいた中で、特筆すべきことだけ、まず記しておきます。
人口22万人に対し、議員の数は法定数38、実定数29、実員数28。現在もオンブズマン的な団体から定数削減の声が続いている。
助役を置かない。市長は現在3期目。人口の5%が外国人。
3.市民自治区、やまと地域の底力事業について
@市民自治区とは、地域住民主体で地域の課題解決に向けた独自事業を展開
し、真の市民自治を実現していくために設けられたもの。04年の施政方針
で市長が打ち出し。市長がイングランドのパリッシュ(教区)制度などを
参考に構想を温めた、とのこと。06年度中に制度化を図る。
A市民自治のさらなる推進のために、その「理念」を自治基本条例に、その
「プラン」を総合計画に位置づけ、そして、「実践」の場として市民自治区
を構築する。
B市長が雑誌に寄せた文より
…自治体はこれまで、平等、公平を旨とし、一律、一様に与える形で行政
サービスを展開してきた。だが、地域の行政需要、取り組み課題の優先順
位は各地域で違うはずだ。それを地域住民自身に考えてもらった上で、行
政にやってもらうのではなく、「自分たちでやる」「自分たちもやる」スタ
イルへ転換していくことをねらいとしている…
C具体的な区割りは、概ね2万世帯を1単位として10地区。
従来の自治会運営には民主的でないなどの市民の不満もある。そこで民主
的な運営ができる基盤を持つこと、事務局を持つことを条件とする。
Dねらいは、
・地域による公共サービスの提供
・市民の活躍の場の創出
・地域で決めたことを行政に反映させるしくみづくり
・これらを通じて、行政経営の効率化も達成
その実現のために市民自治区が担う役割は、
・総合計画とリンクした地区計画の策定
・地区計画の実施
・地域情報の提供
・話し合いの場づくり
を展開する。
E自治区は2つのタイプとする。
・提案型…地域計画に基づき、市民自治区が事業やその優先順位、実施主
体を市に提案。市はそれに基づき予算措置を行う、というタイプ
・決定、執行型…市が予算を市民自治区に配分。自治区が事業決定から予
算執行まですべてを担うタイプ
※まずは提案型のタイプを市内全域に構築することを目指す。自治会、地
区社協、PTA、老人会、商店会、NPOなどが連携、情報を共有しな
がら話し合いの場づくり、地域の計画づくり、地域の広報活動などを進
め、地域課題の解決に取り組む。
F「やまと地域の底力事業」とは、上記市民自治区構想とタイアップし、市
民の自主的に展開する事業に対し補助金を交付するしくみ。
04年度スタート。まずは市民の「きっかけづくり」をねらう。
G「底力事業」は2つのタイプ。
○「はじめの一歩」型…
・1500人以上を対象
・2以上の活動団体が協働
・上限30万円、補助率上限90%
ただし前年度と同一の事業を継続する場合は、上限18%となる。
○「市民自治区準備型…
・1万人以上を対象
・活動目的の異なる複数の団体が協働
・上限50万円、補助率上限90%
※いずれも「公共性があり、地域コミュニティの活性化に資する事業であ
ること」が条件。
※公開審査の手続きを経て認定される。
※補助金予算の積算は、
「はじめ」30万×6事業=180万
「準備」 50万×2事業=100万 計280万円を予算計上している。
H「2つ以上の団体が結びついてやってください」というところがポイント。
まず「はじめ」型で、複数の自治会が共通のひとつのテーマに取り組むこ
とが想定される。
次に自治会とNPOなど、後述「総合計画」図表に示した「エリア型」と「テ
ーマ型」の別々の動きが渾然となり、地域を支える市民活動となっていく
ことをイメージしている。
これまで同一地域で別々に活動していた人々が結びつき、会話し、ともに
力を合わせて活動するようになる。
その完成形が、「市民自治区」である。
I事業の実例
○「△△自治会」と「△△地区を住みよくする会」が協働して、まちづく
り通信の発行、街の資源を再発見する探索、防災地図の作成、花壇づく
りコンテスト、高齢者の生活支援、芋ほり大会などを行う。
○「犬と地域を愛する会」と地元自治会が連携して、犬の散歩をしながら
清掃、美化活動、犬の飼い方講習会、防犯パトロールを行う。
4.電子会議室について
@情報化に関するこれまでの経緯
平成6年 市情報化プラン
まだこの時点でインターネットは普及していなかった。
平成7年 ネットを活用し、パソコン教室を始める。
平成8年 市がHPを開設。まだ一般的なソフトはなかったので、すべて職
員手作り。リニューアルを繰り返し、現在4代目。少しずつ市
民の意見を取り入れて改善しつつある。
平成12年 どこでもコミュニティ(電子会議室)スタート
平成13年 HPのバリアフリー化
A市のHPは「目的別インデックス」方式。
バリアフリー対策としてルビ振りソフト、音声読み上げソフトを採用。
これは大和市とIBMが提携して平成13年に開発、現在50自治体が採用。
B市HPにバナー広告。利用者は地域通貨を扱う業者等のみとしている。
Cヒット数は一日65,000件、月88万件。1人が週に1回は開いている計算。
D職員でネットワークリーダーを組織。職員の中でパソコンが苦手、という
人をフォローする。
EやまとPSメールを18年5月13日からスタート。一般市民向けは防災情報
など、特定者向けは保護者への不審者情報など。
Fどこでもコミュニティ(電子会議室)
平成12年、国の「実証実験」の提案に手を挙げた。
現在、3,562人の登録者(市外の人を含む)
登録者がそれぞれのテーマでHP上に「コミュニティ」を作り、自由に議論
するしくみ。
コミュニティを4つのカテゴリに分類
・市のコミュニティ
・市民のコミュニティ 子育てなど
・練習用コミュニティ
・これまでのコミュニティで、現在は閉じているものも閲覧できる
G電子会議室の検討課題
・これまで、会議室の管理を一市民がボランティアで行ってきたが、これ
には限界がある。
・苦情受付窓口のようになってしまう懸念。これからはナビゲート機能を
強化させ、その力量を持った人を「職員化」する可能性もある。
・システムが古く、アクセスが重たいので、これが発言数減少を導く。シ
ステム改良を検討中。
・ブログや総務省の推進するSNSの導入も検討中。併せて、地域ごとのも
のを連合していくやり方も検討している。
5.「みんなが使える」総合計画について
@「大和市みんなが使える総合計画を考える会」が推進主体。
AA5サイズ22ページ建てのポケット版は全戸配布。同サイズ54ページ建
ての日本語ルビ版・英語・スペイン語版も製作。ほかに、正規版はA4132
ページ建て、こちらは一部500円で頒布。
Bポケット版20ページに図説があり、これを見ながら説明いただいた。
要約して示すと、
自治基本条例
↓
自治の仕組み
○テーマ型コミュニティ ○エリア型コミュニティ
↓
参加・協働の場
∞型の図が示され、テーマ型、エリア型が交錯し、
重複部分があることを示している。
↓
総合計画
このように、市が自治基本条例、総合計画、コミュニティ施策などをバ
ラバラに示すのでなく、市民の諸活動がくっきりと明示され、市のこうし
た施策、計画がそれに呼応し、体系付けられているものであることが、こ
の図説で明らかにされている。
C総合計画のキャッチフレーズは「読める、運べる、書き込める」
・読める…わかりやすい。親しまれる。
・運べる…薄くコンパクト。持ち運べる。雑誌のような感覚。
・書き込める…メモ欄を持つというだけでなく、これから市民の活動がさ
らに充実してくると、総合計画策定時に想定していなかったほど市民が
「先を行く」行動をすることも考えられる。このことから、市民発案で
修正ができる余地を想定している。
Dすべての目標を数値化。例えば自治会加入率を現在の76.5%から目標年度
2011年には80%にする、など。数値化しにくいものについては、アンケー
ト結果の数値などを目標とした。総合計画の目標達成と市民自治は不可分
のものとされている。
E「やる気」と「子ども」をキーワードにした。
F「みんなが使える」とは、行政の総合計画であるに留まらず、それ以上に、
市民の活動の根拠となるような計画にしてあること。
G行政経営の方針も盛り込む。市民自治区についても明記。
6.感想
視察に伺い、説明が始まる冒頭で、説明担当者が開口一番、こう言われました。「ご視察いただき、ありがとうございます」。
お礼を申すのはこちらのはずですが、説明いただく側からこのように口火を切られ、恐縮しました。
社交辞令ではありません。実は「総合計画の中に、市外からの視察を増やそうという目標が、ある」のだそうです。
ある市民が寄せた文の中に、「市長は次々と政策を打ち出し、いわば市民を試している。だからわれわれ市民も、それを受けて立つ」という意味のものがあったそうです。言い換えれば、市長の施策は市民への「挑戦状」。
これを受けて立つという市民の心意気は、どうしてできあがるのか。帰途、さまざまに考えましたが、単に神奈川県民は、大和市民は、風土的にそうなのだ、では説明がつかないと思います。
たしかに、先述の茅ヶ崎市をはじめ隣接する藤沢市、綾瀬市、厚木市、平塚市など、実はこの方面に視察するにあたり、どこの市が受け入れてくださってもかまわなかった、それくらい、この地域の「市民活動度」は先進的です。が、それでも、それは単に「風土」で説明するのでは納得がいきません。
大和市を訪問して、強く印象に残ったのは市長自身の強烈なイニシアチブでした。それは巻末に添える「市民がつくったまちの憲法」という本からの抜粋でも強く現れています。平成15年、市長は自らのマニフェストの中に、「市民自治区」構想を盛り込んだのだそうです。
丸亀市でも、総合計画を立ち上げようとしている今こそ、深くしくみを考究し、完成形に近づかせなければなりません。
市が掲げる「新しい公共」とは、官民が一緒に自治を支えるということ、との説明がありました。「地方分権」という言葉はもうずいぶん言い古されてきましたが、市民にとっては、それがどんなことなのか、なかなか実感がわかない。そこで、国が地方分権というときに、自治体は具体のイメージを市民に提示、提案しなければならない、その必要を感じました。それが大和市にあっては「新しい公共」という言葉であり、そして「市民自治区」という提案であったわけです。まさに国全体の時流に遅れることなく、それを先取している市の姿勢に感服するところです。
市HPに掲載されている「市民参加条例」関連の文中に、検討会議メンバーのひとり、中央大学法学部教授、牛嶋 仁氏のメッセージが載せられています。
…「市民」による「市民参加」条例は、その果実はもとより、育てることにも意義があります。策定過程において、市民自身が参加とそのルール作りの大切さを学ぶことができるからです…
この言葉は、前日訪問した茅ヶ崎市の進む方向にもまったく当てはまるものと思います。
市民参加を明確に言葉とし、そしてシステムとして構築していくのは、まずもって市役所の仕事であり、いま、何をおいても急がれる市役所の役割なのではないかと思います。
この後出てくるPIというキーワード。
これは「パブリック・インボルブメント」のことであり、市民参加、という言葉が、どこか「市民が参加してくるのを待つ」というニュアンスなのに対し、こちらは積極的に「市民を巻き込む」という姿勢。私が常々訴えているとおり、これからの時代は「市民が主役」であるのは論を俟たないとして、まず、その舞台をしつらえるのは行政の仕事、と、これは重ねて、ここで訴えておきたいと思います。
付録 大和市企画部刊「市民がつくったまちの憲法」から抜粋
ドキュメント・市民がつくったまちの憲法
〜大和市自治基本条例ができるまで〜
監修・牛山久仁彦 編著・大和市企画部
市長のあいさつ
つくる会へのお願い
・皆さんがつくるのではなく、皆さんがつくったたたき台を持ってまちに出
て、50回でも100回でもPIしていただきたい。
・住民投票を常設型に。
〜住民主体の行政は市民参加から住民自治へ向かうべきである。
先行の条例
・大和市みんなのまちづくり条例(H10.3)
・大和市新しい公共を創造する市民活動推進条例(H14.6)
担当設置
・大和市企画部分権強化推進担当
・市民中心の策定組織の立ち上げを目指すようにとの土屋市長からの指示もあ
りました。9
・つくる会組織への役所からの職員推薦枠
企画政策課総合政策担当、総務課政策法制担当、市民活動課市民活動支援担
当、以上3課から1名ずつの推薦
・庁内体制
○自治基本条例策定推進課長会議
…各部の庶務担当課長18名と企画政策課長で構成
○自治基本条例検討会
…部課長13名で構成
・市長からつくる会への話
申し訳ないが、皆さんが自治基本条例をつくる市民代表と思わないでほしい。
地域へ出て、色々な意見にたたかれ、それに耐え、フィードバックしながら
がんばっていただきたい。29
・(市民の)反応がまったく芳しくないことに危機感を持ち、…市民にもっと知
ってもらうためのPRや情報発信をしていこうという意見(が出された)33
・チームでアイデアを出し合い、キャッチコピーや策定中を示すロゴマーク、
シンボルマークを作成…まつりで何かPRできないか…しおりを手づくりして
配ろう…百円ショップのサンバイザーにロゴマークを装着…一軒一軒チラシ
をポスティング…ニュースレターを市内全域で回覧してもらう…ロゴマーク
は庁用封筒にも登場…34
・意見交換会「市民キャラバン」、ITの活用「どこでもコミュニティ」電子会議
室。とりわけメーリングリストに大きな恩恵受けた。38
・今回の自治基本条例の策定と、その際、市民を主役におき、PIの手法を用い
て条例制定することは、半ばセットになった土屋市長からの希望でした。44
・土屋市長が職員に提案した「重要事項」(要約)
@市民に関与してもらう
Aタイミングよく必要情報を提供
B人々の発言に耳を傾ける
C人々の価値観や直感に敬意を払う
D平易な言葉で話す
Eオープンで官僚的にならずに応対
F守れることだけを約束
G間違いを認める
H自己防衛しない
I対人関係の技術を磨く
・意見交換会は時間が足りなくなることもしばしば。出し切れなかった意見等
は、Eメールや電話・ファックス等でも随時受け付け、意見交換会の会場では
そのままファックスで送信できる意見シートを配布。52
・もう2〜3年もすれば選挙権を持つことにもなる高校生にターゲットを絞っ
て、つくる会の「青少年・学校担当チーム」が活動。53
・市議会議員にはつくる会の全体会議の記録等を情報提供していましたが、時
間を設けて意見交換をしたいというつくる会からの呼びかけに市議会が応じ、
市議会からの希望により会派別という形で意見交換会を7回開催。54
・市職員を対象とした意見交換会「職員キャラバン」56
・市民フォーラムではスライド「15分でわかる大和市」を自作。また市民と職
員メンバーの共演で20分の寸劇「ある日のつくる会」を。61
・たたき台のたたき台を作成する最後のたたき台作成担当チーム会議は朝4時
まで。予算もないので市役所の職員休養室が急遽「宿泊施設」に。69
・広報にはたたき台の全条文と解説を掲載、同時に切り取れば送料受取人払い
で封書として郵送できる意見用紙を刷り込み、なるべく意見を寄せてもらう
ように工夫。77
・「策定そのものが自治である」と市長。職員と市民が向かい合うのはよくある
光景だが、ここでは市民vs市民。つくる会のPIの場では、市民メンバーが
自分たちで作成した市民討議用資料や条例素案のたたき台を自分たちで説明
し、参加した市民から出された質問や意見に対しても自分たちで受け答えし
た。80・要約
・土屋市長による新聞コラム
…(たたき台ができて)やっと第一幕のステージが終わったところである。あ
くまでも今は「たたき台」であり、これからさらに多くの市民がたたいて、
もんで「素案」をつくり市長である私に提出する。それが第二幕。
市が内容を精査するのが第三幕目とすると、大和市議会が審議をして、条例
制定の可否の判断を下すのが第四幕。88・神奈川新聞H16.2.19要約
・(予算がないので)路上から回収撤去された風俗店の捨て看板をもらってきて
解体しその角材を使い、また職員の家から物干し竿を持ってきた。90
・人集めのため、企画部長発案の、市職員によるテレフォン・アポイントメン
トを実施。市内の自治会長等のお宅に一軒ずつ電話をかけ、フォーラムや市
民キャラバンのご案内。市民キャラバンでは、会場が学習センターであった
ことから、その施設に利用登録しているサークルの代表者にも事務局からテ
レアポ。92・要約
・素案への意見数は1400件、A480ページとなった。104
・市議会の章については市議会から会派ごとに提出された意見がつくる会に出
され、その意見書も参考に検討。105
・発足から1年8ヶ月、素案提出までの584日間に119回の会合等、63回の意
見交換会、およそ3日に1回は何らかの集まりを持っていた計算になる。105
・市民メンバーは実際には無報酬=ゼロ、ではありません…報酬ゼロどころか
むしろマイナスなのです…「市民参加を推進します」「市民が主役」、このよ
うな言葉はあちらこちらの自治体で使い古されている言葉ですが、偽りなく
そのようにするためには、参加した市民の都合を最優先した会合時間、場所
の設定などは当然のこと、事務局は、市民が主体的に企画したり希望したも
のについては、できる限りそれを活かせるよう力を注がなくてはなりません
…要は参加した市民に「がっかりさせないようにすること」…108
・市議会で独自の動きもありました…議員同士で意見を交わす「自治基本条例
議会協議会」が議長の諮問機関として会派から選出された代表等により組織
(された)…全会派の一致は見なかったものの、協議の中で出された38の意見
が、参考意見として付記されました。113
・議会の委員会では夜9時まで4時間にわたる議論138
・議会で修正案
まさかの修正案の内容でした…つくる会でつくった条例素案が、行政で条例
案にする過程で、そしてその後市議会で審議される中で、色々と修正される
であろうことは十分承知していたつくる会でしたが、今回の修正案の理由説
明には納得できないメンバーが多く、総務常任委員会が開催された日の夜に
は早速今後の対応が話し合われました。148
・本会議傍聴
がっかりしたメンバーも多かったようです。本会議での条例制定後、メンバ
ーの顔に喜びの表情は見られず、怒る人、がっかりする人、皆さん言葉少な
に市役所を去って行きました。159
・条例の周知活動
広報紙の記事の一部として通常通り掲載するのではなく、広報誌の真ん中に8
ページものの別冊の形ではさみ込み、条例を理解してもらうためのリーフレ
ットとして使えるようにしました。
つくる会と市との共催による自治基本条例シンポジウムを開催。
市職員には、2月から5月、1900人弱の市役所全職員が受講するというこれ
までにない大規模な職員研修を実施、4会場で計34回の研修となった。
教育委員会により、市立小中学校の児童・生徒全員に自治基本条例を簡単に
説明したリーフレットを配布。188
・太田市の「市民自治区」構想
土屋市長の施政方針演説では、「住民自治のさらなる推進に向けての取組み」
として、その「理念」を自治基本条例に、その「プラン」を総合計画に位置
づけ、そして、「実践」の場としての市民自治区を構築していきたいとありま
す。193
・「市民参加を進めます」「市民が主役のまちづくり」などという言葉が色々な
自治体でかなり安易に使われるようになっていますが、これまで長い間、首
長と議会が互いの緊張だけでなく時には妥協しあいつつ自治体運営をリード
してきた関係の中に、「市民」という主体が加わって何の軋轢もなく新たな関
係がつくられるはずがありません。195
・市民参加を進めれば進めるほど、ダイレクトに市民の声が行政内で活かされ
るようになり、では一体市議会の役割はどうなるのだという意見も出てきま
す。市民の声を行政に活かすことは本来、市議会の重要な役割であり、その
役割や存在意義を脅かすものとして市民参加を捉える議員も少なくありませ
ん。当然のことながら議員は選挙で選ばれており、反面、公募により参加す
る市民は自薦であり、この差をしっかり認識した上でそれぞれの役割を考え
ていく必要があります。196
・自治体職員に
(市民の声を聴いた結果、それが役所の)シナリオどおりであろうがなかろう
が、そこで出される市民ならではの認識による市民ならではの声を活かそう
とすることが、市民参加の目的を達成する上で最優先されるべきことではな
いでしょうか。市民感覚を大切にしたいと、市民に積極的で主体的な参加を
呼びかけるならば、それ相応の覚悟が行政側に求められます。197
これからの市民参加に携わっていく職員は、…集まってくれた市民のモチベ
ーションを下げずに、その声や希望を可能な限りいかせるよう事業内容や周
囲の環境をコーディネートしていく力が求められてきます。
職員として自分も、その意見する市民同様、少しでも状況を良くしたいのだ
という姿勢が相手に伝わったとき、態度を変化させる市民は多くいるはずで